

世界をリードしてきた小型車のお手本

初代ゴルフI。写真は高性能モデルのGTI(1975年)
初代ゴルフ(通称ゴルフI)が登場したのは1974年。以後、サイズアップしたゴルフII(83年)、衝突安全性に配慮したゴルフIII(91年)、質感や快適性を高めたゴルフIV(97年)、プレミアム市場へ移行したゴルフV(2004年)と、時代の要請に応えながら進化してきた。バリエーションも豊富で、75年に登場した高性能モデルのGTI、79年に加わったカブリオ、ゴルフIII時代の93年に追加されたワゴンなどがある。
質感や快適性を大きく向上させたゴルフIV

1997年に登場した4代目ゴルフIV(写真はGTI)
1997年に登場した4代目ゴルフ=ゴルフIVは衝突安全性やパッケージングを追求した結果、ゴルフ初の3ナンバーサイズとなった。質感の向上も目覚しく、静粛性や乗り心地といった快適性でも大きく向上。日本発売は98年で、当初はアウディ譲りの新開発1.8L・DOHC・5バルブエンジン(125ps)を搭載したが、翌年から従来型の2.0L・SOHC・2バルブ(の改良版)に戻された。当初から1.8Lターボ(150ps)のGTIをラインナップし、翌年にその4AT版と上級仕様のGTXを追加。
一方、廉価モデルとしては1.6L・SOHCのゴルフEを加えた。さらにゴルフIIIベースのまま外観をIV風にアップデートしたカブリオレ、荷室部分を延長したゴルフワゴン、3.2L・V6(241ps)を搭載した最強モデルR32などが登場。また、ハッチバックにVW日本正規輸入50周年を記念したお買い得グレードのLとLプラスが2000年に追加された。他に、装備を充実させた特別仕様車が多く存在する。
III時代に登場したステーションワゴン

ゴルフIVベースのワゴンは2000年の発売。写真は今回試乗したGLi
ゴルフワゴンの登場は意外に遅く、ゴルフIII時代の93年からスタート。日本では95年に発売された。その成り立ちはボディ前半を通常のハッチバックと同じとしながら、荷室部分を320mm延長して積載能力をアップしたもの。ルーフレールが付くなどRV的なムードも加わって、日本ではハッチバックに次ぐ人気モデルとなった。
2世代目ゴルフワゴン(ゴルフIVベース)は、2000年に日本発売。全長が245mm伸びて、最大1480Lの荷室容量を誇る。当初は1.6Lの「ゴルフワゴンE」、2.0L・SOHCの「ゴルフワゴンGLi」のラインナップで始まり、2003年に1.8Lターボ(150ps)の「ゴルフワゴンGT」を追加した。ハッチバックがゴルフVにモデルチェンジした後も、ワゴンは現行車としてラインナップされている(2005年8月現在)。クリーンなスタイルと高い実用性を備えたモデルだ。

扱いやすいサイズ、シンプルなデザイン
前から見てもルーフレールによって一目でワゴンと分かる
ボディサイズは全長4400mm×全幅1735mm×全高1490mm。いわゆるコンパクトワゴンのサイズで、日本ではやっぱりこれくらいが扱いやすい。ホイールベースは2515mmと普通のハッチバックモデルと同じで、キャビンの広さも基本的に変わらない。ドアミラーが小さいのはゴルフIV初期の小さな弱点で、翌2001年から通常の大きさに改良された。しかしワゴンの場合、ゴルフ特有の太いCピラーがガラスになるので後方視界は悪くない。
ゴルフらしいシンプルさと上質感がハイレベルで均衡したエクステリアデザインは、今でも十分に通用する。ワゴンGLiは15インチアルミホイール、ボディサイドの同色モールを標準装備。

群を抜いた質感
樹脂パーツの隙き間を見れば精度は一目瞭然。写真のナビは社外品
ブラック基調のインパネは地味だが、樹脂パーツの精度や表面処理の統一感など、質感はこのクラスで群を抜いている。ゴルフVに見劣りしないどころか、部分的には越えているのではと思えるほどだ。ちょっとコスト掛け過ぎちゃいました、という仕事振りだ。
センターコンソールに収納式のドリンクホルダーを装備するのは便利(欧州車では普及が遅かった)。しっかりした作りのシートは、特に大柄な人には頼もしく感じられるはず。リアシートは背もたれが立ち気味でダラッと座れないが、ちゃんと座れる良心的なもの。そうやって座れば足元の広さも十分、というのがゴルフの設計思想だ。
ダブルフォールディングを採用
ダブルフォールディングで後席を畳めば、1480Lの荷室が現れる
電気式スイッチのリアゲートを開けると、ハッチバックの330Lに対して、およそ1.5倍の460Lの荷室が現れる。急ブレーキ時に荷物が前に飛ぶのを防ぐラゲッジネットパーティションを標準装備し、床下にも収納スペースを備える。リアシートをダブルフォールディング(座面を引き起こしてから背もたれを倒す)で折り畳めば、最大1480Lの大容量に。この時の操作がやや重く、ヘッドレストを抜く作業もやや面倒。元に戻す時はシートベルトのキャッチ側を挟まないように気をつける必要もある。ただ、この方法なら後ろの荷物がキャビンに侵入しにくい、あるいは後席クッションの厚みが確保しやすいといったメリットもある。ゴルフVのハッチバックではシングルフォールディング(背もたれを倒すだけ)に変更されている。

滑らかさも得た2.0Lエンジン
17.3kg-mのトルクを2400回転で発揮する力強い2Lエンジン
今回試乗したのは2000年モデルのゴルフワゴンGLi。5年間で6万7000kmという走行距離は少し多目ではあるものの、年式相応に距離を重ねた個体だ。IVベースのワゴンとしては初期モデルだが、ゴルフIVとして考えれば2年目のモデル。1.6LのワゴンEもあったが、GLiはSOHC・2バルブの2.0Lエンジンを搭載する。当時の販売価格は消費税抜きで275万円だ。
2000ccで116ps、17.3kg-mというスペックは頼りないが、低速の力強い加速は不満のないもの。車重は1340kgと軽くないが動力性能は十分で、「スペックで実力は推し量れない」典型的な例だ。特にゴルフIVの2.0Lエンジンは、III時代のものに様々な改良が施され、例の「グォー」という唸り音や振動がかなり減った。パワーステアリングもIIIより明らかに軽い。国産車から乗り替えてもすぐに馴染めるはずだが、その分いかにも「ワーゲン」という骨太感や素朴さは薄れている。
III時代とは比較にならない快適性
IIIに比べて快適性の上がったIVの走り。パワステも国産車並みに軽い
そういったわけで、ゴルフIIIからIVへの進化の中では、特に快適性の向上幅が大きい。ゴルフIIIもしっかりしたクルマだが、現代の基準からすると高速走行時の騒音や振動が少しずつ乗員を疲れさせる。その点このゴルフIVは振動の遮断が巧みで、1クラス上のクルマのようだ。6万7000kmを走った今回の個体もその点は大丈夫で、ワゴンボディにも関わらずテールゲート付近からの音の侵入も気にならない。

2000 フォルクスワーゲン ゴルフワゴン
| 形式 |
GF-1JAPK |
| 全長 |
4400mm×全幅1735mm×全高1490mm |
| ホイールベース |
2515mm |
| 車重 |
1340kg |
| 乗車定員 |
5名 |
| 駆動方式 |
FF |
| エンジン |
2リッター直列4気筒SOHC・2バルブ |
| 最高出力 |
116ps/5200rpm |
| 最大トルク |
17.3kgm/2400rpm |
| 使用燃料/容量 |
プレミアムガソリン/60L |
| 10・15モード燃費 |
9.7km/L |
| タイヤ |
195/65R15 |
| 発売時期 |
2000年2月 |
| 当時の新車価格 |
275万円(消費税抜き) |
| 試乗車スペック |
| 販売価格 |
155万4000円(消費税込み) |
| 走行距離 |
6万7200km |
| ボディカラー |
インディゴブルー |
| 試乗日 |
2005年7月 |

ゴルフといえども輸入車
ゴルフIVのワゴンは、IIIまでのゴルフに比べてトラブルは少ないようだ。とはいえ、基本的には欧州車なので、故障や異音に対して国産車並みの「トラブルフリー」を期待してはいけない。そのあたりさえ分かって乗れば大丈夫だ。一部モデルでリコールが出ているが、対策済みであれば心配は要らない。気になるならスタッフに聞いておくといいだろう。
走り方や年式によるが走行5万kmほどでもタイミングベルト&ウォーターポンプ回り、ブレーキディスクは交換済みかどうか要チェック。ただし交換が必要でも、部品代&工賃は国産車と大差ないと思っていい。ちゃんとメンテナンスすれば10万kmでも20万kmでもシャキッと走るのがゴルフの魅力だ。

今の時代にジャストフィットしたゴルフ
シリーズを問わず一度は乗っておきたいクルマの一つ、それがゴルフだ
一度はドイツ車に乗ってみたい、国産車とは違う思想のクルマに乗ってみたい。そんな輸入車への入門としてもいいし、VWというクルマを分かっている人が乗るのもいい。ゴルフIVは従来のIからIIIまでとは異なり大衆車としての性格はかなり薄まったが、「今」ゴルフを選ぶ人の期待に応えるのはIVだと思う。実用の道具としてゴルフを乗りこなすのであればIVこそが今の時代にジャストフィット。それでいてデザインはシンプルでゴルフらしいし、インテリアや乗り味にも依然、質実剛健さが感じられるのも魅力だ。
今のところは見た目重視でもOK
グレードについては、高速道路や山岳路をよく利用するならGLiが良いかもしれないが、「速さ」を求めないユーザーの間ではEの評判も悪くない(筆者は残念ながらEに乗った経験がない)。予算が許せば03年から追加されたターボのGTも面白い。全体の玉数は豊富でコンディションのばらつきも少ないので、装備やボディカラーといった仕様重視でも構わないだろう。当然、女性オーナーの下で丁寧に乗られたワンオーナー車は狙い目だ。
ハッチバックかワゴンかは好みで
今回試乗したワゴンが積載性に優れるのは間違いなく、走りや快適性の点でもハッチバックに遜色ない。というわけでゴルフワゴンが「万能のゴルフ」なのは認めるが、実用上はハッチバックの実力も侮れない。今回の執筆担当者はゴルフIIIのハッチバックに9年乗っているが、自転車はもちろん、分解式ベッドや大型冷蔵庫まで積めて、容量で困ったことは一度もない(たいていギリギリのところで収まる)。全長が短いので縦列駐車も気分的に楽だ。ワゴンかハッチバックかの選択は好みでいいだろう。(担当K)